JUNICHI HAGIWARA ARCHITECT OFFICE|萩原淳一建築設計事務所 JUNICHI HAGIWARA ARCHITECT OFFICE|萩原淳一建築設計事務所

別冊UN40

40歳以下の北海道の建築家による雑誌

その先を想像させる「余白」

 

僕がまだサンタクロースを信じていた頃、「クリスマスに何が欲しい?」と聞かれ、自分で考え出したオリジナルのオモチャをオーダーしたことがありました。頭の中で思い描いた色や形を絵に描いて親に見せたんです。そんなものどこにも売っているはずもなく、翌朝の枕元には、なんとなく似てるけど、僕の想像とは全然違うオモチャが置かれていました。きっと、苦労して探してくれたんだと思います。

 

頭の中でデザインをイメージすることは、割と昔から習慣になっていたような気がします。設計するときも、まず全体像を思い浮かべます。いろんな選択肢があって、それを組み合わせたり、削ぎ落としながら全体のイメージを頭の中で築き上げていく。実際に図面にするとつじつまの合わない部分も出てきてしまうので、微調整しながら最初に思い描いた全体像に近づけていきます。

 

UN40の本展では、自分独自の表現方法を探りながらアイディアを捻出しています。どちらかというと、屋外に展示するような大きめの作品が多く、見せるというより、体感したり体験できるものをつくりたいと思っています。例えば、林の中に間口90センチ、奥行110センチ、高さ170センチ、大人一人が入れるくらいの四角い箱を置いておく。狭い入口をくぐって中に入ると一枚板のベンチがあって、そこに座って上を見上げると、開いた天井から斜めに四角く切り取られた空と緑の木立が見えるんです。完成品を眺めるだけではなく、そこから先を想像したり新しい何かを発見してもらえるような作品にしたかった。子どもたちは何度も出たり入ったりして、まるで秘密基地みたいに遊んでいました。こちらが予想してなかった使い方や遊び方を発見してくれるところも面白い。仕掛けを作って、体験してもらって、どんな反応をするか眺めているのは楽しいですね。

 

建築でも、そういう部分を表現できればと思っています。何もかも造り込んでしまうのではなく、必要最小限の機能だけを用意して、あとは余白として残しておきたい。機能が多すぎると使い方が限定されてしまうので、誰が使っても同じような結果しか出てこない。余白があれば、使う人自身が学習し、それぞれの使い方を発見して、少しずつ自分のものにしていくという楽しさがあります。最初は不便に思う場合もあるかもしれませんが、自分で使い方を工夫できる可能性がある方が面白い。使う人にとっての心地よさを考えながら、あえてデザインしない部分を残しておく。そのバランスを大切にしたいです。住宅は、つくり手がきっかけを作り、使い手が日々の暮らしの中で完成させていく共同作品だと考えています。

 

事務所が入っているビルは、大正時代に札幌で最初に建てられた鉄筋コンクリート造のオフィスビルです。階段がいくつもある迷路のような構造で、訪ねてきた人が迷うこともたまにあります。新しいデザインもいいですが、歴史を積み重ねてきたものにはリアリティがあり、説得力があっていいですね。多少の不便さも余白の趣として楽しんでいます。

 

 

 

身の回りには気に入ったものだけを置いておきたい性分で、少ないアイテムで構成されたコンパクトなスペースが好みです。設計・デザインに関しても、線や面をシャープに見せる傾向にあります。無駄なもの、余計なものはあまり置きたくないし、見せたくない。ただ、殺風景にならないような配慮はしています。全体像をイメージするときは、ヒラメキや直感を大事にします。納得できるイメージが浮かばないと前に進まないので、納期が迫っているときはちょっと焦りますが・・・。冷蔵庫の余り物を使って料理をするみたいに、与えられた条件の中から何ができるかを考えるのは楽しい作業です。条件や制約が厳しいほど、いろんなアイディアを絞りだそうと努力するので、予想外の答えが見つかることもあります。最小限の機能で最大限の効果を・・・それが理想です。

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