ほんの少しの厳しさ
雑誌のコラム
「ほんの少しの厳しさ」
心機一転、気持ちを入れ替えるための大掃除。終わってみると、ゴミ袋が1、2、3・・・。毎回のことですが大量のゴミの量に驚かされていました。それらのものを手に入れた当時は、自分にとって必要なものたちだったはずですが、時代の流れや環境の変化、自分自身の嗜好や価値観の変化に伴い、“必要ないもの”として認識されるようになったものです。その中には、何度も使われたものや、ほとんど使われなかったものなど様々で、何度も使い込んだものには感謝を、一度も使わなかったものには、若干後ろめたさを・・・。
そんなことを経験してから、最近ものを所有する時は、金額や大きさの大小にかかわらず、慎重になります。現在~将来にわたって、自分自身にとって必要か必要じゃないかをできるだけ見極めたいからです。それは、設計やデザインをする場合においても必要不可欠な感覚だと思っています。“ものをもつ側”と“ものをつくる側”両方の立場から、見極める眼力を養うことは、大切なことと感じます。
アナログからデジタルへ時代が移行し、ものの機能も充実し、過保護とも思われるほど親切で多機能で・・・。あれ?それって本当に必要ですか?と感じることも多々あります。機能が充実し、性能も良くなることは、このうえなく好ましいことですが、何か物足りなさを感じてしまいます。多機能で使う人に労力を使わせないものになっていく程、何かを失っていくような・・・。失っていく何かとは、使う人が想像し、発見し、学習していく“時間”です。
親切すぎないものづくり・・・。
そこには、ほんの少しの厳しさを感じるような“ちょっとした不親切”が必要かな・・・と、ふと思いました。
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- 掲載誌
- リプラン北海道 vol.82